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デメリットについて

預金者保護法には、デメリットやこれから改善すべき課題もいくつかあります。

●通帳は法の対象外
今回の成立した預金者保護法の対象となるのは、あくまで「キャッシュカード」です。
キャッシュカードと同じように、通帳やクレジットカード、インターネット取引の被害も深刻ですが、その被害は補償されません。

民主党が主張していた盗難通帳による窓口での引出しやインターネット取引による被害補償は、付帯決議に盛り込まれるに留まりました。
付帯決議には「防止策や預金者保護の在り方を検討し、必要な措置を講じる」とありますが、それには法的拘束力がなく、キャッシュカード以外の被害補償は先送りされました。

盗難通帳による被害は、全国銀行協会の調査発表によると、2004年度までの5年間で4140件、被害総額はなんと103億円もありました。
同じ期間の偽造・盗難キャッシュカードによる被害の、件数・被害額ともに8倍もの多さです。
そんな多大な被害が出ている盗難通帳の補償が対象外とされたのは、ATM特有の問題として、偽造・盗難カードとは同じには議論できないとの判断があったようです。

また日本の「印鑑信仰」がとても根強いことも理由のひとつです。
日本の取引では、依然として印鑑への信頼が高く、むしろ諸外国では当たり前のサインの方が軽く見られがちです。
与党では、印鑑の有効性を論議すれば、印鑑を重視する日本の商取引に影響を与えかねないと主張しています。
さらに、あまりに多額な被害のため、補償の対象にすると、銀行への負担が大きすぎるとの指摘もあったようです。

●ネットを利用した取引も対象外
先ほど書いたとおり、インターネット関連の法整備も間に合いませんでした。
最近多発するフィッシングなどへの対応は、これからの課題とされました。

●なりすまし詐欺の誘発
金融機関の被害補償が義務づけられたことで、新たな心配も出てきています。
それは「なりすまし詐欺」が誘発されることです。
そもそも「なりすまし詐欺」とは、配偶者や子、孫になりすまして、交通事故の示談金などと理由をつけて、多額の現金を振込ませ、だまし取ろうとする犯罪のことです。
さまざまなバリエーションがあって、警察官や弁護士、当事者の相手方を装って、複数の人物が電話口に出て演技をしながら振込ませるというものまであります。

当初は「オレオレ詐欺」と呼ばれていましたが、警察庁は、事件の実態が呼称にそぐわなくなったとして名称を改め、その後「振り込め詐欺」や「なりすまし詐欺」などと変わってきました。

成立前の補償制度では預金者が被害を偽装しても、銀行から冷たく対応されることがほとんどでした。
そのため、被害にあったことを偽装するメリットが少なかったのです。
しかし、原則補償を義務づける新たなルールでは、銀行は全ての被害申告に対して真摯な対応で補償を検討することになります。
そうすると、被害者になりすまして銀行から補償額のお金をだまし取ろうとする、「被害者なりすまし詐欺」が増える可能性が出てくるわけです。

金融機関は預金者の過失を証明しなくてはなりませんが、例えば、預金者が家族や友人と共謀して被害者になりすました場合は、その証明はさらに困難になってしまいます。

「なりすまし詐欺」を防止するために、法案では、預金者に金融機関への届け出を速やかに行うこと、警察への届け出義務、捜査に協力すること、などを補償の前提としています。
しかし、金融機関はこれでは不十分と考え、今後の対応に頭を悩ませているのです。

●手数料などの負担が増える
金融機関が犯罪防止策として、カードのIC化、生体認証異常取引を検知するシステムなどの導入には莫大な費用がかかります。
金融機関は手数料を増やすなど検討していますし、すでにICカードの発行は有料化されています。
犯罪対策の設備投資の負担が、預金者にまわってくることになりそうです。

●補足
クレジットカードにおいても、カードの偽造・変造による被害があとを絶ちません。
カード会社は対応策として、ICカードの導入や、加盟店での本人確認の徹底などを行っています。
しかし、最近増えているスキミングやフィッシングなど、ますます犯罪の手口が巧妙になるため、なかなか対応しきれません。
クレジットカードの場合は、キャッシュカードと比べて異常取引への対応も早く、保険システムも確立されてはいます。
しかし依然として被害が後を絶たず、法律による保護の検討も重大な課題と言えるでしょう。


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