« 金融機関の補償実態(3) | メイン | 金融機関の補償実態(1) »
スポンサードリンク
金融機関の補償実態(2)
なぜ金融機関は今まで預金者にとって不利な約款を定めることができたのでしょうか?それは民法の条文に根拠がありました。
民法478条に「債権の準占有者に対する弁済」の規定があります。
条文の内容を少しわかりやすく直してみると、
「債権の準占有者に対してした弁済は、弁済者が善意であった場合に限り、その効力を有する」
というふうに定められています。
この規定を、「ATMでの偽造・盗難キャッシュカードによる不正引出し」の事例にあてはめてみましょう。
・債権→預金のこと
(預金者が銀行に対して、預金の払戻請求権という債権を有しているということ)
・準占有者→偽造・盗難カードをカードを持参して引出しを行った人
・弁済→預金の払戻し
・弁済者→金融機関
・善意→金融機関が不正引出しであることを知らないこと
(ATMは人ではないので、当然に善意とみなす)
・効力を有する→つまりは「有効」ということなので、正しく引出されたのと同じに扱われる
民法478条は債権契約についての規定です。
金融機関は債務者、預金者は債権者になります。
そして準占有者というのは、債権者の外観を持った人をいいます。
他の人から見た場合、本当は債権者ではないのに、債権者に見えてしまう人のことです。
真の所有者以外の人が預金通帳と印鑑を持っていれば、準占有者と扱われます。
同じように、キャッシュカードを持ち、正しい暗証番号を知っていれば、準占有者になります。
この条文によって、金融機関が行った払戻しは不正引出しに対しても有効になり、補償義務を負わないという約款を定めることができたのです。
では、なぜ民法478条ではこのように規定されているのでしょうか?
それは第一に弁済者の保護からきています。
準占有者にした弁済が有効でないとすると、もう一度債務者は、債権者に弁済しなくてはなりません。
つまり二重払いしなければならないのです。
それでは債務者があまりに不利になってしまいます。
そのため準占有者にした弁済は有効だと考えられています。
しかし、478条の意義はそれだけではありません。
二重払いしなければならない不安があれば、債務者はなかなか弁済してくれないかもしれません。
そうなると、弁済が滞ってしまい、債権者は困ります。
(自分が真実の預金者であっても、銀行があまりに払戻しに対して慎重であると、債権者である預金者は困ってしまいます。)
また債務者も、弁済しないことで、債務不履行などとなりかねません。
そういったことから、債務者の保護、債権者の利益、円滑な取引を考えて定められている条文と考えられます。
★そもそもはこの条文は、一般的には、債務者の方が弱い立場であることから考えられているものです。 しかし、銀行などの大きな金融機関が債務者で、情報量やその処理能力が少ない預金者が債権者であるため、不都合が生じてしまったと思われます。
このカテゴリー「成立前の補償制度」では、以下のことも調べることができます。

直接的なきっかけ