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金融機関の補償実態(1)

預金者保護法が成立する前の補償制度は、各金融機関によってかなりの差がありました。
金融機関がそれぞれに定める約款によって、補償内容が決められていたからです。

●金融機関によって異なった対応をされた事例を採り上げてみます。

ある人が、同時にそれぞれ異なる金融機関のキャッシュカードを3枚盗まれ、3枚のカードとも預金が引き出されるという事件がありました。
しかし3銀行のうち2銀行は、全く補償しませんでした。
1つだけ全額補償を行った銀行がありましたが、その普通預金は補償つきのものだったため、それに従って補償が行われたようです。

このように全額補償されるケースもまれにありますが、それぞれに定めているとは言っても、共通して被害者の救済が十分ではありませんでした。

●ある銀行のキャッシュカードに対する規定を見てみると、金融機関は原則として「被害の補償をしない」ということがはっきりと書かれています。

かみくだいた内容は次のようなものです。
「ATMで、入力された暗証番号と、届け出されている番号が一致して払戻しが行われた場合には、偽造・変造・盗用その他の事故があっても、その被害については責任を負いません。ただし、この払戻しが偽造カードによるものであり、カードおよび暗証の管理について預金者の過失がなかったことを当行が確認できた場合は、この限りではありません(補償する可能性もあります)。」

どんな事故があっても、入力された暗証番号と届け出の番号が一致していれば、銀行は責任を負わないと明記されているのです。

例外的に補償される可能性のある、「当行が確認できた場合」というのが、被害者の立証責任に関わる問題になります。
預金者自身で、自分に落ち度がなかったことを証明しなくてはならないわけですが、現実的にはかなり困難なことです。

例えば、キャッシュカードの盗難にも遭っておらず、暗証番号の管理にも問題がないのに不正に引出しが行われた場合などの、犯行の手口そのものがわからないときは特に難しいと思われます。
盗難に遭わず、暗証番号もきちんと管理されていたとなると、一見して預金者に落ち度がないことは明らかに思われますが、それを改めて証明しなくてはならないのです。
そして、そうした場合の金融機関の対応は、なおさら消極的です。
警察でもない一個人にできることは限られますし、実質不可能に近いことです。

このように補償を拒まれる事例は数多くあり、今も多くの訴訟が行われています。
しかし、結果的に預金者は泣き寝入りするしかないというのが、今までの補償の実態でした。

預金者保護法が施行されるまでの補償はどうなるかというと、金融機関によれば、「最近の事例については、できる限り法の趣旨に基づいた補償を目指している」とのことです。


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